つれづれ面会記

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離婚をしてから丸5ヶ月ぶりに、子供たちと会うことができた。電話での会話は元嫁から頑なに断られ、一度決めた面会日程を台風で延期して歯がゆい思いをしたが、ようやくこの日に辿り着いた。

 

会う直前まで冷静でいることができて、たとえ子供たちの反応が緊張や不安などのネガティブなものだったとしても、それをありのまま受け入れるという気持ちの準備が整っていた。5ヶ月間のブランクがあるわけだし、子供の心はデリケートだ。元嫁から僕の悪口を吹き込まれていても何ら不思議ではない。想定をして、覚悟ができていた。

 

十分な時間の余裕を持って待ち合わせ場所の駅に到着し、来るであろう方向をぼんやり眺めて子供たちを乗せた車を待っていた。義母が連れて来てくれると聞いていたからだ。家の方向がわかるから、どの方向から来るかもわかる。

 

「あ、いたよ!」という義母の声が、想定の反対の方向から聞こえた。車だと思ったら徒歩で来た。振り向くと、すでに子供たちが立っていた。完全に視界と意識の外の、心の無防備なところから急に現れた。様子を伺う間もなく、二人ともニヤリと笑って「パパー!」と駆け寄って抱きついてくれた。一瞬で顔が涙でグシャグシャになっちゃった。はは笑  僕の想定は、何もかもがまったくの見当違いだったようだ。

 

長男は僕に抱きつくなり間髪入れずに早口で、運動会のかけっこで一等賞になったという報告をしてくれた。次男はまだ小さくて会話が上手じゃないけど、ずっとニコニコして、自分から手を繋ごうとしてくれた。長男も手をつないでくれて、僕の両手がふさがった。ずっとしたかったことができた。子供たちの手は、小さくてやわらかくて温かかった。

 

タクシーに乗って、駅から離れた山の上の大きな公園へ向かう。車中では、トイレが上手にできるようになった話、新しい戦隊モノの話、粘土で作っている動物の話、ママのウンチが臭い話、ママにチンチン攻撃をする話、お風呂でチンチンを伸ばす話をしてくれた。全部、僕から質問せずに長男が自発的に話をしてくれたのだ。なんだ、距離感全然無いじゃん。チンチンは剥いてから洗うんだぞと再教育をしていたら、あっという間に到着。料金にして片道4,000円近く。そんなに走ったっけという感じ。

 

運転手がめちゃくちゃ人の良いジイさんで、こちらの事情を察してか、2時間近く公園に滞在するにも関わらず下山せずにメーターを止めて駐車場で待っていてくれると言い出した。そんなに都合のいい話はないだろう!と思ったら、無線で会社に説明して、あっさりと了承を得ていて驚いてしまった。それどころか、公園の入口まで一緒に来てくれて、時々子供たちの面倒すら見てくれた。まさかこんなに有り難い出来事に恵まれるとは思っていなかった。田舎の緩さと優しさの為せる業だ。

 

山の斜面に作られた公園なので、アスレチックやすべり台には高低差や長さが申し分ないほどにあって、二人とも思いっきり遊び倒していた。明らかに運動能力が上がっていて、成長を感じる。母に作ってもらった弁当をよく食べてくれた。運転手のジイさんには、ご厚意へのお礼におにぎりと唐揚げを食べてもらった。二人とも食べたら眠くなったようで、運転手のジイさんと僕で、子供たちを一人ずつ抱っこしながら坂道を登って駐車場へ向かう。

 

タクシーに乗り込む前に、三人の写真を撮ってもらった。二人を同時に片腕ずつに抱っこすることをダブル抱っこと呼んでいるんだけど、ダブル抱っこをした状態で写真を撮ってもらった。子供たちの体重は増えているはずだが、最近筋トレを頑張っているおかげで難なく抱き上げることができた。筋トレに励む理由は、成長して重くなる子供たちを、いつまでもダブル抱っこできる父親でありたいからだ。そう決めてある。

 

帰りの車中では、次に会うときもダブル抱っこをする約束をした。「パパは筋肉を鍛えていて強くなるから、二人とも大きくなってもダブル抱っこできるよ」と伝えた。腕に力こぶを作って触らせたら、「かたいかたいー」と言って喜んでいた。ダブル抱っこには上腕二頭筋の力が欠かせない。日頃から追い込んでおいてよかった。

 

駅に着いたら運転手のジイさんにお礼を告げて別れて、駅構内のコンビニに向かった。撮った写真をプリントアウトして子供たちに渡すためだ。過去にやった経験はあるのだが、あいにく何度やってもWi-Fiの接続がうまくいかず、苦渋の撤退。何もかもうまく行き過ぎた面会だし、時間どおりに笑顔で帰すと決めていたから、この撤退は心と時間に余裕を持ってすぐに決断ができた。

 

予め用意していた離婚前の写真を入れたアルバムを長男に渡して、表紙に絵を書いてもらった。すぐに顔を描き始めてくれて、「これパパ」と。続いて自分の顔と次男の顔も描いて「おとこさんにんね!」と言ってくれた。アルバムは次会うときにまた持ってきてもらう約束にして、僕は今日撮った写真をプリントアウトして持ってくる約束をした。写真をアルバムに追加するためだ。子供たちと繋がる何かが欲しかった。

 

定刻に義母が迎えに来て、定刻どおりにお別れ。「パパまたあそぼうね」と笑顔で言ってくれたから、楽しく遊んで笑顔で帰すという最重要目標は達成できた。姿が見えなくなってから、またしばらく会えないことを寂しく感じて、しばらく力が抜けてベンチに座ってシクシクとしてしまった。トイレの洗面台で顔を洗って鏡を見たら目が真っ赤になっていて、次からはサングラスを持ってこなきゃいけないことがわかった。

 

家に着いてから、今日の写真と動画と声の録音を何度も見たり聞いたりしている。結局、ほとんどブランクを感じずに、良い意味で普通に思いっきり遊んで帰った、というだけだった。距離感も不安も緊張もなかった。子供たちとの楽しい時間を切り取った記録と思い出を今日だけは目一杯味わって、明日からまたいつもの生活に戻ろうと思う。次会うときは、お互いにもっと強く大きくなっていよう!パパとの約束な。